18話 ついで
  ――ぱきんっ。 木製の柄が割れる音に、我に返った。 とうとう割れたらしい。ナイフを引き抜こうとすると、刃は喉に突き刺さったまま、割れた柄だけが手の中に残る。「死んだ……?」 ふらふらと立ち上がると、そこから数歩離れ、ぼんやりと『それ』を見…
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 17話 狩り場
 「……すげーな。魔法って」 カートはケガをしていた腕を回し、目を丸くする。「ったりめーだろ! さすがはオイラ! いやー、やっぱこの天才さまがいないと、ホントどいつもこいつもたよりなくてまいっちまうよなー。もうポポイさまさまだろー」「あなたの…
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 16話 役立たず
 「お待ちしておりました。お連れ様も、どうぞこちらへ」 橋の前で紋章を見せたとたん、兵士は槍を下ろした。まずは疑いのまなざしを向けてくると思っていたが、意外なものだ。「おー。テーコクのヘイシってのは、ずいぶんしつけが行きとどいてんだなー」「ポ…
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 15話 招待状
 「――そーそー、すごかったんだよ。そんでさ。アンちゃん、ディラックのにいちゃん思い切りぶん殴ったりするしさぁ――」 ぼんやりする中、聞こえてきたポポイの言葉に、プリムの意識は一瞬で覚醒した。「――なにそれ!? どういうこと!?」 飛び起きる…
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 14話 鈍感女と嘘つき女
  ゆっくりと、体を起こす。 窓の外を見ると、昼を過ぎた頃だろう。日が高い。 昨日のひどい熱と吐き気はすっかり消え、だるさも収まった。少し疲れは感じるが、もう起きても大丈夫だろう。 様子を見に来たプリムは、胸をなで下ろし、「良かった。一日で良…
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 13話 精霊の加護
 「カール? どこー」 船内を捜し回るが、灰色のもふもふは見当たらない。 ケガ人の手当てが一段落した時、カールの姿は消えていた。 いくら化け猫とはいえ、あれだけの爆発や騒動が起こったのだ。驚いて隠れてしまっても不思議はない。 ラムティーガに頼…
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 12話 堕ちた騎士道
 「――ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ! 死ぬ! 痛い痛い痛い! やめろやめてくれぇ!」「痛いのはそれだけ具合が悪いからですよぉぉぉぉぉぉぉ! 放っておくと取り返しがつかなくなりますからぁ、今、治しておかないとねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」「うぎぃぃぃぃ…
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 11話 船の守り猫
 「あの……『貨物室』って言ってなかった?」 セルゲイに『仕事場』として案内されたのは、なぜか機関室だった。 船の仕組みはよく知らないが、さすがタスマニカの軍艦。計器類やよくわからない巨大な機械が音を立てて動き、蒸気を上げている。空調の効き目…
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 10話 砂漠の海賊
 「なんにもなかったわね」「そーだね……どこ行っちゃったんだろ」 ぼやきながら、火の神殿の外に出る。 ――火の種子を神殿に返してくれ。 サルタンで再会したジェマからの依頼で、種子を返しに火の神殿まで来たはいいものの。いるはずの火の精霊は見当た…
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 9話 忘れられた精霊
 「これがお城?」「おうよ! マタンゴ族が誇る『マッシュ城』だ!」 城と言っても、パンドーラやエリニースの城のような、人が作ったものとはまるで違う。 元々空洞が多かった岩山をそのまま利用したらしく、あちこちに穴があり、マタンゴ達が出入りしてい…
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 8話 風の孤児
 「……で、大人様は、一体いつになったらお帰りくださるのでしょうか?」「あんたも大概しつこいわね!」 ようやく思い出したのは、マタンゴ王国へと続く岩山に近付いた頃だった。「第一、私はあんたについて来たわけじゃないの。チビちゃんが心配だからつい…
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 7話 ポポイの定義
 「ひどい……」 顔をそむけるプリムとは対照的に、ポポイはぽかんとした顔で、しっかりと村の惨状を見つめていた。 翌朝、たどり着いた小さな村は静まりかえり、乾いた風が吹いていた。「みんな、どこだ? どこ行ったんだよ?」 人っ子一人いない。焦げて…
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